技術資料

加速度センサを用いた変形性膝関節症の判定

モーションセンサの人体運動センシングへの応用例1

はじめに

医療法人玄真堂 川蔦整形外科病院 リハビリテーション科での応用例

最近、加速度センサや角速度センサといったモーションセンサの応用先として、人間の運動状況を把握するために、主に医療機関の皆様からお引き合いを頂くことも多くなりました。しかし、医療機関の皆様にとって、センサをどうやって使用したら良いのか、どういったデータが得られるのか、なかなかわかりにくい点も多いかと思います。そこで今回は、実際に加速度センサを理学療法の現場にてご使用頂いた例をご紹介いたします。

測定方法

実際にセンサを適用した測定システムの例を図1に示しました。今回の測定では、弊社の圧電型3軸加速度センサ MA3-04Ac-RDB(写真1)を採用いただきました。センサを脛骨頭部(膝関節)と足関節外果部(足首関節)に取り付けました。それぞれのセンサの出力方向は、前後方向加速度をX軸、側方方向の加速度をY軸、垂直方向の加速度をZ軸と定義します。センサからは、加速度方向により、それぞれの軸の正方向への加速度が加わった場合基準電圧に対して+の電圧が、負方向の加速度が加わった場合-の電圧がそれぞれ発生します。この電圧変化データを信号処理ボックス、信号処理装置を通じてコンピュータに取り込みました。なお、川嶌整形外科病院様では、信号処理装置は市販品のPower Lab(AD Instruments社製)を使用しておられましたが、弊社において信号処理装置を備えた「モーションレコーダ」という形で、さらにはパーソナルコンピュータも含めた測定システムとしてご提供することも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

測定結果

センサを取り付け、歩行時のデータを測定した結果の一例を図2に示します。グラフの横軸は時間経過を示しており、「Heal Contact」間が1歩行周期を示します。縦軸はそれぞれの軸の加速度出力を示しています。今回は歩行時に膝側方方向に発生する加速度に注目し、健常者の方(10名)と変形性膝関節症(膝OA)患者の方(9名)のデータについて、FFT解析(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を行い比較しました。

図3が、膝OA群と健常群のFFT解析結果です。横軸が周波数、縦軸がスペクトル強度です。健常者が2つのピークが確認されるのに対し、膝OA患者は20Hz以下のピークしか認められないことがわかります。このことから、健常者は歩行時に膝に加わる衝撃を20-40Hzの周波数の微小な震えで側方に吸収しているのに対し、膝OA患者はこの機能が低下しているのではないかと推測されます。本研究の詳細に関しては、下記参考文献をはじめ、関係学会論文等で報告されておりますので、ご参照ください。

最後に

今回弊社センサをご採用頂き、貴重な測定結果のデータを引用させていただきました川嶌整形外科病院リハビリテーション科の木藤伸宏先生、島澤真一先生、弓削千文先生、奥村晃司先生、菅川祥枝先生、吉用聖加先生及び、九州労災病院の勤労者骨・関節疾患治療研究センターの井原秀俊先生、西日本臨床医学研究所の義肢装具士の三輪恵先生、神谷秀樹先生に、厚く御礼申し上げます。

参考文献

理学療法学 第31巻第1号 86?94頁
「加速度センサを用いた変形性膝関節症の歩行時下腿運動の解析」
木藤 伸宏、島澤 真一、弓削 千文、奥村 晃司、菅川 祥枝、吉用 聖加 (医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院)
井原 秀俊 (九州労災病院 勤労者骨・関節疾患治療研究センター)
三輪 恵、神谷 秀樹 (西日本臨床医学研究所)
岡田 恵也 (マイクロストーン㈱)