技術資料

無線モーションレコーダで広がる計測の世界

はじめに

人体や動物の動作を、計測し解析するためには、計測による副作用がなく、できる限り自然な状態で、動きを検出し数値化する計測器が求められる。例えば、リハビリ中の患者の運動機能回復状況を知る上では、動きを妨げるケーブルなどの構成要素は、大きな副作用を引き起こす。
この度、加速度センサまたは角速度センサによる計測データの無線送信が可能な小型モーションレコーダを開発したので、ご紹介し、この計測機器の活用と応用の可能性について言及したい。
一般的な活用としては、人や動物の歩行状態や関節の動きを解析するため、計測対象部位に装着し、動作を遠隔計測することである。本システムには、計測したデータを、時系列にグラフ表示すると同時に、3次元ベクトルデータを二次元平面に投影した「リサージュ図形」を描いたり、時間スケールやゲインを変えて再描画する画期的な機能を搭載している。

要旨

人体や動物の動作を解析するためのセンシング技術は多様化しているが、被計測物に取り付ける装置が邪魔にならず、生体の自然な動きを検出し数値化する計測技術が求められている。そこで、ワイヤレスで小型・高機能の動作記録計(無線モーションレコーダ、略称MR-RF)の開発を行った。すでに、人や動物の歩様異常、運動機能の回復状況などを客観的にとらえる目的などに活用されているが、今後は様々なセンサ、解析システムと連携した新たな応用が期待されている。

装置の概要

図1は、今回開発した装置の外観写真である。主電池は入手が容易な単4乾電池2本を使用しており、内部に時計のバックアップ用二次電池を搭載して利便性を高めている。また、防水構造を提供しているために、洗浄工程を含む生産ラインや、野外フィールドでの計測・利用が可能である。
本機の計測モードには、PCと連携したリアルタイム計測と、メモリ蓄積の2モードがあり、前者において無線機能がより効果的である。メモリ蓄積モードは、一定期間の全データ全体を分析するために、または複数モーションレコーダの同時計測(計測開始同期トリガ機能を使用)などに有効である。 この装置の詳細スペックは、製品紹介ページに示す。
国内の電波基準に適合しており、内部にはBluetooth(TM)の登録済み小型無線モジュールを搭載している。
次に、ソフトウェアの主な機能を以下に示す。

リアルタイム計測モード

  • リアルタイム波形グラフ表示
  • リサージュ波形描画
  • ゲイン、時間軸(再生速度)を変えて、リサージュの再描画

メモリ蓄積モード

  • 複数MR-RFの計測条件設定と計測開始の同期制御(図3)
  • 計測停止後の波形読込およびグラフ表示

両モードに共通

  • CSVファイル出力
  • FFT解析(図4)

有効な適用事例

人間や動物の動き、とりわけ歩様の解析は、研究のみならず、臨床現場でも重要な分野である。腰の中央部にMR-RFを固定し、歩行時のデータを観測すると腰部の搖動がはっきりとわかるので、人体動作の安定性、前後・左右・上下のバランス、特異性、周期性などの評価が、客観的に行える。従って、従来数値化しにくかった人体の歩様、転倒のし易さ、関節等の運動機能が、数値と図形の両面から評価でき、歩行の特徴、運動機能の回復度合い(治療効果)等を判定支援する。このように、本装置は医師の判定支援システムとしても応用できるものである。
また、整形外科医師、加齢診療医師、理学療法士などに支援システムとしてご利用されると、説得力が生まれ、患者さんが納得する治療が可能になる。
スポーツの分野においても、体の動きをデータや図形で見ることが可能になるので、プロの選手やトレーナのデータと比較することにより、セルフトレーニングの有力なツールになる。
このように、MR-RFの活用できる分野は幅広く、医療、健康分野をコアとした計測ビジネスに貢献ができると期待している 。

結論

モーションレコーダは、従来からコンパクトで、安価ながらも、豊富な分析機能を有し、計測データの加工・再利用ができるという公開性などの点で優れており、根強い愛用者がいる。その有用性を更に高めるため、今回無線モーションレコーダを開発した。
本装置は、3次元の加速度、または角速度を、被測定物(者)の自然な状態で、リモート計測するために開発され、その目的は十分達成できた。人体、動物の行動・動作解析のほか、自動車など車両の振動解析などで更に用途は拡大するであろう。また、本装置は防水構造になっているため、水中歩行訓練の評価、水中と空中の機能回復度比較などにも活用可能である。
今後はキャリブレーションの精度向上など、更なる高精度化、更なる小型化に挑戦し、お客様の問題解決に役立つ製品を提供して行きたい。